面接は“聞く場”ではなく“伝える場”建設業が採用を逃さないための会話術

面接で好印象を与える会社は「話す量」が違う

面接=応募者が話す場だと思っていませんか?

「面接では応募者にたくさん話してもらおう」
──これ、ほとんどの面接マニュアルに書いてある“常識”です。

けれど建設業の採用では、この“常識”が逆効果になることが多い。
実際、「面接で良い印象を持った会社ほど話してくれた」という応募者の声が圧倒的に多いんです。

なぜか?
それは、“面接=選考”ではなく、“面接=信頼形成”だから。

面接は「話す」より「伝える」。
聞くよりも、「開く」時間に変える。

この記事では、建設業の面接現場で何百人と会ってきた経験から、
“話す量の違い”が採用成功を左右する理由を解き明かします。


「よく聞く面接」と「よく伝える面接」の違い

まず、典型的な“聞く面接”を想像してみましょう。

面接官「これまでどんな仕事してきた?」
応募者「配管工事を3年ほど…」
面接官「なるほど。残業は大丈夫?」
応募者「はい、問題ないです」

──たったこれだけで終わってしまう。
質問はしているけれど、会話が浅い。
応募者は「ただ答えた」だけで、会社の印象はほぼゼロ。

対して“伝える面接”ではこうなります。

面接官「うちは3人1チームで現場回るスタイルなんですよ。リーダーが段取りをして、若手が学びながら動く形です」
応募者「へぇ、チームでやるんですね」
面接官「そうなんです。だから一人で黙々というより、“連携できる人”が合うかもしれませんね」

──この違い。
前者は「質問」、後者は「会話設計」。
応募者の理解と信頼をつくっているのは“情報の共有”なんです。


話さない面接で“採用ゼロ”だった会社が変わった

ある中堅の建設会社(舗装業)は、面接通過率が低く、応募者の辞退率が高いのが課題でした。
原因を探るため、面接を録音して分析すると──驚くことに、
面接官の発言は全体のわずか28%

つまり、7割以上を応募者が話していた。
応募者にとっては「質問されて答えるだけ」で、会社の雰囲気も仕事のリアルも見えなかった。

そこで行ったのは、「話す量の再設計」

・応募者:6割
・面接官:4割

にバランスを変更。
面接官が「仕事の流れ」「一日のスケジュール」「職場の雰囲気」などを具体的に伝える時間を増やしました。

結果、面接後の辞退率が52% → 18%へ改善。
たった数分“多く話す”だけで、応募者の信頼が劇的に変わったんです。


人は“理解した会社”を選ぶ

面接で応募者が重視しているのは「条件」ではなく「納得感」です。
人は、分からないものには不安を感じる。

特に建設業のような「現場の見えない職種」では、
“仕事内容がイメージできるか”が大きな決め手になります。

「なんとなく雰囲気が良かった」
「丁寧に話してくれた」
「一緒に働く人の顔が浮かんだ」

これらの理由で入社を決めた人が多いのはそのためです。
面接とは、“不安を言語化して取り除く時間”。
つまり、「会社がどれだけ話すか」で応募者の判断が決まるんです。


「話す量」を最適化するための3ステップ

では、面接官がどれくらい話せばいいのか?
単に“たくさん話す”のではなく、“戦略的に話す”ことが重要です。

① 前半10分は「自己開示トーク」

最初の10分で、面接官が会社のリアルを話す。

  • どんな現場が多いか
  • チーム体制
  • 一日の流れ
  • 最近の現場エピソード

これで応募者の緊張がほどけ、「会話モード」に変わります。

② 中盤15分で「掘り下げ質問」

ここで応募者に話してもらう。
ただし、“質問の前提”に会社の情報を織り交ぜる。

「今の話にあったように、チーム制ですが、一人で判断する場面もあります。そういう時どう考えますか?」

“質問に背景をつける”ことで、応募者の回答の質が上がります。

③ 後半5分で「未来の話」

最後は、“一緒に働くイメージ”を言葉にする。

「この現場だと、あなたの前職経験がすごく活かせそうですね」
「最初の3ヶ月はOJTでつきっきりになるので安心してください」

応募者が「ここで働く自分」を思い描ければ、採用は半分成功です。


会話構成で変わる印象の“温度差”

同じ内容でも、「順番」で印象は変わります。

パターン流れ印象
A社応募者自己紹介→質問→条件説明“事務的”“冷たい”
B社会社紹介→質問→現場紹介→条件“丁寧”“誠実”“話しやすい”

話す順序を変えるだけで、「温かい会社」に見える。
応募者は、“情報”よりも“伝え方”で会社を判断しているんです。


職長が話すと応募者の信頼が2倍になる

現場リーダーが面接に同席して話す会社ほど、応募者の印象スコア(アンケート調査で測定)が高い傾向にあります。
その理由は単純です。

「実際に働く人の声」は、会社の広告より100倍リアル。

現場の職長が話すことで、
「この会社は人を大切にしている」
「現場の雰囲気が良さそう」
と感じる。

面接官教育をする前に、“話す人”を変えるだけで結果は動きます。

(参考記事 → 現場が採用に関わる会社ほど“人が集まる”


応募者の信頼を得る“3つのトーク設計”

話す量だけでなく、“話す中身”も重要です。
特に建設業の応募者に響くのは以下の3つ。

① ストーリーで語る

数字や制度より、「人の話」が響きます。

「最初は未経験で入った若手が、今は班長になってる」

② “違い”を語る

他社と比べた「自社の特徴」を短く伝える。

「うちは元請け案件が多いので、残業が少ないんです」

③ “未来”を語る

応募者の成長イメージを見せる。

「1年後には現場リーダーを任せたいと考えてます」

“リアル+希望”を話せる会社ほど、選ばれます。


面接官教育=「話し方の共通言語化」

話し上手な面接官を育てるのではなく、
「話す構成」を共通化することが大事です。

採用職人では、以下の3つを面接教育で導入しています。

  1. トークスクリプト化(全社共通の面接台本)
  2. 10分単位の構成設計(話す量の比率を可視化)
  3. ロールプレイ評価(録音・自己評価で改善)

これにより、
「誰が面接しても印象が良い会社」になります。

詳細はこちらの記事で紹介 →
建設業専用 教育動画・面談テンプレート〜“見るだけ・話すだけ”で育つ仕組みをつくる〜


実践企業の成果:面接トーク改善で応募率2.2倍

ある建築会社では、採用職人が作成した「話す構成シート」を導入。
面接官が先に“会社の想い”と“現場のリアル”を伝えるように変更しただけで、
一次面接通過率が68%→89%、内定承諾率が2.2倍に上がりました。

「話す量」が多い会社は、信頼される会社。
そして信頼される会社には、人が集まる。

(関連: 採用に成功する建設会社の共通点は「求人の出し方」ではない


採用職人の支援で“話す面接”を仕組みに変える

採用職人の採用支援サービス(https://recruit-worker.com/)では、
面接官教育を通じて「話す構成」と「応募者心理設計」を仕組み化しています。

求人原稿で興味を持たせ、面接で“信頼”をつくる──
これが応募導線の本質です。

採用は、「話せる会社」が勝つ時代です。


まとめ:面接の勝敗は“話す比率”で決まる

“話し上手な面接官”より、“話す構造を持つ会社”。
応募者が安心する面接とは、質問が多い面接ではなく、会話の設計がある面接です。

面接とは、語りで信頼をつくる営業。
「伝える会社」に、人は集まる。

あなたの会社の面接、“話す量”は足りていますか?


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