現場教育を“仕組み化”した会社の成果と仕掛け。建設業に必要なのは「教える才能」ではなく「仕組み」だった

「教える人が変わらないのに、人が育つようになった」

ある建設会社の社長が、ふと漏らした言葉です。
以前は「誰が教えるか」で新人の成長スピードが変わり、
教育にムラがありました。

それが、“仕組み化”を始めてから状況が一変。
教育の「やり方」ではなく「流れ」を整えるだけで、
新人の定着率が45%→91%まで上がったのです。

この記事では、現場教育を“人”から“仕組み”へ切り替えた会社の実例と、
成果を生み出した3つの仕掛けを紹介します。

採用職人は建設業に特化した中小企業様向けに採用支援サービスを提供しています。採用でお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。御社の成長を加速させる機会を。

 

教育が“属人化”している会社ほど、人が育たない

多くの建設会社では、教育は「できる人が、できる時に、できる範囲で教える」状態。
つまり、仕組みではなく感覚で回っています。

問題は、担当者が変わると教育の質がガラッと変わること。
新人が「Aさんに習った時はできたけど、Bさんに怒られて辞めた」──よくある話です。

これでは会社の育成ノウハウが個人の経験に吸収されて終わり
結果、どれだけ採用しても「現場で育たない」状況が続きます。


教育を仕組み化した会社の成果

私が支援したA社(従業員28名)は、もともと教育担当が日替わり状態。
「教え方が違う」「人によって基準がバラバラ」──新人が混乱していました。

そこで、教育の流れを5ステップに設計

フェーズ内容担当目標
1ヶ月目現場マナー・安全ルール職長A現場基本理解
3ヶ月目作業補助職長B指示理解
6ヶ月目簡易施工管理職長C独り立ち準備
9ヶ月目現場報告書人事報告精度向上
12ヶ月目振り返り面談社長継続目標設定

この仕組みを導入した結果:

  • 定着率:45% → 91%
  • 教育コスト:▲38%
  • 新人の現場デビュー平均期間:2.8ヶ月短縮

驚くべきは、「教育担当者は誰も変わっていない」こと。
“教える内容”が統一されただけで、現場が機能し始めたのです。


なぜ仕組みがないと“教育コスト”が上がるのか

教育を仕組み化していない会社では、同じ説明を何度も繰り返しています。
1人が教える時間=会社のコスト。

たとえば、1人の職長が月10時間×新人3名に教えると、
月30時間分の稼働が教育に消えます。
それを動画・マニュアル・テンプレートで代替すれば、
時間の半分以上が生産活動に戻る

つまり、教育仕組み化は“コスト削減策”でもあるのです。

関連して詳しくはこちら → 教育コストを半分にする“動画OJT”のすすめ


改善策①:教育を「流れ」で整える

最初にやるべきは、“教える順番”を明確にすること。
現場では、教える内容よりも教えるタイミングのズレがミスを生みます。

具体的には:

  1. 入社時研修(安全・挨拶・道具)
  2. 現場導入(チーム同行・補助作業)
  3. 実務フェーズ(実作業+レビュー)
  4. 成果確認(面談・評価)

この流れを「教育マップ」として可視化する。
職長が交代しても、どの段階で何を教えるかが一目で分かるようにしておきます。


改善策②:職長教育を“仕組みの一部”にする

教育仕組みの中核は“教える人”。
しかし、現場では職長が「教え方を学ぶ機会」を持たないまま任されがちです。

そこでA社では、「職長OJT講座」を導入。
1回2時間×月1回の勉強会で、

  • 教える順序
  • フィードバックの仕方
  • 言葉選びのコツ
    を共有しました。

この取り組みで、「教えることが楽になった」という声が多数。
教育は“得意不得意”の問題ではなく、設計と習慣の問題なのです。

👉 職長教育の考え方は → 建設業の技術者採用、なぜうまくいかない?現場視点で解く“人が集まる条件”


改善策③:教育と採用を“1本の線”で結ぶ

教育仕組みは、採用活動の延長線上にあるべきです。
なぜなら、入社後の教育体制が整っている会社ほど、応募時点での魅力度が高いから。

求人原稿にも「教育計画・育成ステップ」を明記することで、
求職者は「入社後の未来」が描けます。
その結果、応募率が約1.8倍に上がった事例も。

関連して詳しくはこちら → 採用と教育は分けて考えるな──採用職人が語る育成設計


教育が“自走する”会社へ

教育を仕組み化すると、「教える人」に依存しなくなります。
マニュアル・動画・面談設計・評価シートが連動し、
会社全体が新人を育てる仕組みに変わります。

この“自走する教育”が実現すれば、

  • 新人が自ら学ぶ
  • 職長が誇りを持って教える
  • 人事が現場を支援できる

──そんな“育つ会社”の循環が生まれます。


「人を変える前に、仕組みを変えよう」

教育で結果を出す会社は、特別な人材がいるわけではありません。
違いは、「教育を設計しているかどうか」だけ。

「うちは教える人がいない」と嘆く前に、
教えやすい仕組みをつくることが最優先です。

採用職人の採用支援サービスでは、
採用と教育を一体化した「育成設計」を導入し、
現場教育の効率化・定着率向上を支援しています。
👉 採用職人の採用支援サービス


✅ 関連note記事: