採用計画を「経営計画」に組み込むだけで業績が安定する理由

「採用は採用、経営は経営」──その考えが会社を止めている

「採用の話は人事に任せている」
「経営会議では数字(売上・利益)しか扱わない」

──もしそう思っているなら、危険信号です。

なぜなら、採用計画と経営計画がズレる会社ほど、業績が不安定になるからです。

採用は人を集めるための「イベント」ではなく、
事業を継続させるための“経営装置”です。

それを経営計画の外で動かしてしまうと、
いくら求人広告を出しても、いくら現場が頑張っても、結果はついてきません。


データが示す「採用を経営に組み込んでいる会社」の安定性

リクルートワークス研究所の『中小企業採用構造変化レポート2024』によると、
採用計画を経営計画に組み込んでいる企業は、そうでない企業に比べて

  • 離職率:−27%
  • 業績の年次変動:−38%
  • 採用単価:−32%

と、いずれの指標でも安定しています。

つまり、「採用を経営の一部として扱うだけで」、
会社は“波の少ない成長”を実現できるということ。

参考:リクルートワークス研究所「中小企業の採用構造変化レポート2024」
https://www.works-i.com/research/


建設業に多い“採用が浮いている”状態とは

建設業の経営者と話していると、こんなパターンをよく見ます。

経営計画書には「売上目標」「受注目標」「粗利率」などがあるのに、
「採用人数」や「育成計画」が一切書かれていない。

これでは、採用が“経営の外”で動いている状態です。

たとえば、来期の目標に「施工班を2班から3班に増やす」と書いてあるのに、
その裏付けとなる人員採用計画が存在しない。

この矛盾こそが、建設業の成長を止めている「構造的ボトルネック」です。


採用計画を経営計画に組み込むと起きる3つの変化

経営と採用をつなぐだけで、会社は確実に変わります。

① 計画に“人”の視点が加わる

「数字(売上・利益)」だけだった経営計画に、
「人材(採用・育成)」という“現実的なリソース”の視点が加わる。
結果、無理のない経営計画になる。

② 採用活動に“経営判断”が入る

「誰を採るか」「いつ採るか」が経営戦略と直結するため、
採用の優先順位が明確になる。

③ 人件費が“コスト”から“投資”に変わる

採用・教育・評価が事業計画の一部として予算化される。
人に使うお金が“攻めの費用”になる。

この3つが整うと、採用は一気に「仕組み化」されていく。


実例:採用を経営に組み込んだだけで黒字化した会社

私が人事部長をしていた頃、
ある中小建設会社は、年間200万円の求人広告費をかけても応募は10人以下。
採用は毎年ゼロ〜2人。
当然、施工量は伸びず、赤字続き。

そこで、社長と一緒に経営計画の中に採用セクションを新設しました。

内容はシンプルです。

  • 3年後に施工チームを4班体制へ
  • 必要人員:15人 → 24人
  • 年間採用目標:4〜6人
  • 採用単価目標:40万円以下

この「採用KPI」を経営会議で毎月レビュー。
広告効果・面接通過率・定着率を数字で追いかけました。

結果、半年で応募200人・採用20人を達成
翌年、売上は5倍、黒字転換。

経営が採用を「数字で管理」した瞬間、会社が回り出したのです。


採用KPIを経営指標に組み込む方法

「採用KPI」というと難しく感じるかもしれませんが、
本質は“経営の言葉で採用を語る”こと。

たとえば──

指標名定義理想値経営への影響
応募数求人に対しての応募者数月10名以上母集団形成の基礎データ
面接率応募者のうち面接に進んだ割合50%以上原稿・対応スピードの精度
採用率面接者のうち採用に至った割合10〜20%面接設計と評価基準
定着率採用から6ヶ月後の在籍率80%以上マッチングと育成設計
採用単価1人当たりの採用コスト40万円以下投資効率の把握

これらを経営会議の議題に組み込むだけで、
採用は“経営数値”として扱えるようになります。


採用計画を経営にリンクさせる5ステップ

実際に、採用を経営に組み込むための手順を紹介します。

ステップ①:事業目標をもとに必要人員を算出

「施工班を増やす」「売上を20%伸ばす」──
これらの目標を“人”に落とし込む。
(例:1班=3人 × 2班追加=6人採用)

ステップ②:採用計画表を作る

  • 年間採用人数
  • 採用時期
  • 採用コスト
  • 担当責任者

を明文化。Excelやスプレッドシートで管理するだけでも効果的。

ステップ③:KPIを設定

応募数・面接率・定着率などを、
「経営会議のKPI」として毎月チェック。

ステップ④:採用活動を“プロジェクト”として運営

採用を単発のイベントにせず、年間プロジェクト化。
進捗報告を「営業・経理」と同じ扱いに。

ステップ⑤:採用後の定着データも分析

採用は“ゴール”ではなく“入口”。
定着率や教育コストも経営数値として追う。

関連して、採用定着についてはこちらの記事も参考に:
新人が定着しない原因は?建設業でよくある「定着の課題」と解決のヒント


「経営×採用」が噛み合うと、社員のモチベーションも変わる

経営計画に採用が入ると、
社員は「自分たちの採用に社長が本気なんだ」と感じる。

面接時にも、社長が語る言葉に重みが出る。

「この採用は、うちの3年後の体制をつくるための投資なんだ」

──この一言が、求職者の心を動かす。

採用が“数字”から“物語”になる瞬間です。


採用計画がない会社に起こる5つの弊害

反対に、採用が経営計画に含まれないと、次のような弊害が生じます。

  1. 人が足りなくなってから慌てて募集する
     → 毎回、急募でコストが高くなる。
  2. 採用目標が曖昧
     → 「とりあえず誰か来てくれればいい」採用になる。
  3. 人件費が読めない
     → 経営計画が“数字の綱渡り”になる。
  4. 人が定着しない
     → 採用の目的が現場レベルで共有されない。
  5. 育成計画が後手に回る
     → 教育コストが年々増え、利益を圧迫。

つまり、「採用計画を作らないコスト」は、広告費よりも高いのです。


経営会議で使える「採用計画シート」の考え方

採用計画を経営会議で扱うには、以下の4要素を1枚で見せるのがポイントです。

セクション内容目的
1. 経営目標売上・受注・班数など採用の背景を明確化
2. 採用目標年間採用人数・職種・時期数値化による行動管理
3. 採用KPI応募・面接・採用・定着成果の見える化
4. 担当・進捗責任者・次回対応継続的改善

これを毎月見直すだけで、採用は“経営会議の議題”に昇格します。

実際のフォーマットは、こちらの記事でテンプレート付きで紹介しています。
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採用計画を経営に組み込むことの“心理的効果”

面白いことに、採用を経営計画に入れると、
社員の「責任感」と「当事者意識」も変わります。

なぜなら、採用が会社全体の“未来設計”になるから。

現場が「自分たちの仲間をどう増やすか」を考え始め、
人事が「現場をどう支えるか」に変わり、
経営者が「人をどう活かすか」に集中できる。

採用は、組織の方向性を一つに揃える装置なんです。


採用計画が経営を安定させる理由

経営の数字は、最終的に「人の動き」によって決まります。

受注量が増えても、施工班が足りなければ売上は伸びない。
新しい現場が取れても、職長が育たなければ品質が落ちる。

結局のところ、経営計画は人材計画の上に成り立つのです。

採用計画を経営に組み込むことは、
単に「人を採る仕組み」ではなく、
「会社を未来に運ぶ仕組み」をつくる行為です。


まとめ:採用を経営の中に戻そう

  • 採用計画を経営計画に組み込むだけで業績は安定する
  • 採用KPIを設定すると、採用は「数字で語れる経営テーマ」になる
  • 採用は経営の鏡──“採る力”が“伸びる力”をつくる

採用は、気合でも予算でもなく、仕組みで決まります。

その“仕組みづくり”を体系化したのが、
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関連リンク


最後に。
採用は「人を集める作業」ではなく、
「未来をつくる経営判断」です。

経営計画書の中に“採用計画”の1ページを増やす。
それだけで、会社は安定し、成長し始めます。