採用におけるROI思考──「費用」から「投資」へ変える経営の視点

採用費は「コスト」ではなく「経営投資」になっていますか?
求人広告にお金をかけても、応募が来ない。
採用してもすぐ辞める。
──こうした話を聞くたびに感じるのは、「採用費を経費としてしか見ていない会社が多い」ということです。
経営者が採用を“投資”として扱い、そのROI(投資対効果)を正しく見れば、同じ広告費でも成果は何倍にも変わります。
採用ROIを理解することは、**「人材戦略=経営戦略」**へ進化させる第一歩です。
この記事では、元人事部長として20社以上の採用改善に携わった経験から、
「採用ROIをどう測り、どう経営判断に生かすか」を具体的に解説します。
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🟧採用コストが「経営のブレーキ」になっていないか?
私が最初に人事責任者として現場に入った頃、年間求人費は200万円以上。
にもかかわらず、応募は10人以下、採用0〜3人。
経営会議では「また応募が少ないのか」とため息が出るのが恒例でした。
その頃は、採用費を「広告経費」として見ていました。
つまり、“使ったら減るお金”という認識。
当然、コストを減らそうとするほど採用は弱くなり、結果的に売上も現場も停滞する──そんな悪循環が起きていたのです。
🟧広告費を削って“人が消えた”年
ある年、経営判断で求人費を半分(100万円)に削減しました。
結果、応募は前年の1/5(2名)、採用ゼロ。
人が足りず現場が遅れ、外注費・残業代が跳ね上がりました。
数字で見るとこうです。
| 項目 | 広告費100万円時 | 広告費200万円時 |
|---|---|---|
| 応募者数 | 2名 | 10名 |
| 採用者数 | 0人 | 3人 |
| 現場遅延コスト | +120万円 | 0 |
| 売上機会損失 | 約400万円 | 0 |
つまり、“広告費削減で経費を抑えた”つもりが、結果的に年間500万円以上の損失を生んでいたのです。
ここで私は初めて気づきました。
採用は「コスト」ではなく、「利益を生む投資」だと。
🟧採用のROIを“数字で”捉えなければ経営は狂う
採用ROI(Return on Investment)とは、
**「採用によって生まれた利益 ÷ 採用にかけたコスト」**のこと。
例えば、以下のように考えます。
1名採用にかかったコスト:40万円
その社員が1年間で生み出す粗利:800万円
→ 採用ROI = 800 ÷ 40 = 20(=2000%)
このように、ROIで採用を評価すれば「どの職種にどれだけ投資すべきか」が明確になります。
経営判断の軸が、“費用削減”から“投資最適化”に変わるのです。
👉 関連note:「応募が来ない会社」がやっている致命的な3つの間違い
🟧採用ROIを算出するための「3つのデータ」
採用のROIを出すには、以下の3つの数字を押さえるだけで十分です。
| データ項目 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| ① 採用単価 | 1名採用にかかった総コスト(広告+工数+教育) | 投資コストを明確化 |
| ② 生産貢献額 | 採用者が1年で生み出す利益(粗利ベース) | 効果を算出 |
| ③ 定着期間 | 採用者が戦力化して働いた期間 | 投資の回収期間を分析 |
例えば、建設業の現場監督を採用した場合:
採用コスト:45万円
粗利貢献:850万円/年
在籍期間:2年
→ ROI = 850×2 ÷ 45 = 37.7(=3770%)
つまり、採用1名あたりROI=37倍。
これを「経費」として削るのは、利益を削るのと同じです。
🟧ROIを上げる“採用設計の3ステップ”
ステップ1:採用費を「必要な投資」として予算化
採用を「空いたら出す」ではなく、「経営目標に基づき計画投資」する。
たとえば「売上10%増に必要な現場人員=3名」と逆算し、必要採用費を投資枠として組み込みます。
ステップ2:媒体依存から脱却し、導線を自社最適化
求人広告会社に任せるとROIは下がります。
自社の採用ページ・紹介・HP導線を整えれば、応募単価を3万円以下に下げることも可能です。
👉 関連:「求人広告会社任せ」から脱却!建設業が“自社で採用をコントロール”する方法
ステップ3:採用ROIを月次KPIに落とし込む
「応募数・採用数・離職率・ROI」を毎月グラフ化し、経営会議で報告。
これにより採用が“投資管理の一部”になります。
数字で会話できる採用体制こそ、真の強みです。
🟧ROIを高める“定着投資”の発想
ROIを上げる最大の方法は、「採った人が長く働く」こと。
つまり“定着”もROIの一部です。
私が支援したD社(社員25名)は、教育制度を見直したことで1年定着率が50%→90%に。
採用ROIは1.8倍に向上しました。
投資対象を「採用」から「育成・定着」にまで広げたことで、採用の回収効率が劇的に改善したのです。
👉 参考:建設業専用 教育動画・面談テンプレート
🟧ROIを可視化した会社が得た“経営の変化”
私がコンサルで関わったE社(建築業・社員30名)では、採用ROIの管理を導入しました。
Before
- 年間採用費:180万円
- 採用人数:2名(採用単価90万円)
- 離職率:60%
- 売上伸び率:2%
After(1年後)
- 年間採用費:200万円
- 採用人数:8名(採用単価25万円)
- 定着率:90%
- 売上伸び率:18%
- 採用ROI:680%
数字を見た社長の第一声が印象的でした。
「今まで“採用費を減らせ”と言ってたけど、
“どう増やせばリターンが最大化するか”に変わった。」
採用を投資視点に切り替えたことで、経営会議の議論そのものが変わりました。
👉 関連:新人が定着しない原因と解決のヒント
🟧 採用職人noteで学ぶ「ROI経営の実践法」
私のnoteでは、今回の「採用ROI」を実践するためのテンプレートや指標設計を公開しています。
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🟧採用ROIは「経営者の意識改革」から始まる
採用費を「支出」ではなく「投資」として扱えるか。
それが、今後の建設業経営を左右します。
ROIを把握すれば、「広告会社に振り回される採用」から「自社が主導する採用」へ変わります。
数字で判断できる採用は、経営を強くする。
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