数字で見れば採用は変わる。建設業のための“データ型PDCA”入門

採用は「やる」より「回す」──現場が変わるデータ設計とは
「採用って、感覚でやってませんか?」
私は人事部長時代、何十社もの採用現場を見てきましたが、
成功する会社には共通点があります。
それは、「採用を“勘”ではなく“データ”で動かしている」こと。
求人を出して、面接して、終わり。
これでは毎年同じ悩み──「応募が少ない」「ミスマッチが多い」──を繰り返すばかりです。
けれど、採用をPDCAでまわせる会社は、たとえ小規模でも着実に改善を重ね、
数年で“採れる体質”をつくっています。
今回は、その「採用PDCA」をどう設計し、どう実践すれば現場が変わるのか。
私自身が採用単価を3分の1にした経験をもとに、具体的に解説します。
採用職人は建設業に特化した中小企業様向けに採用支援サービスを提供しています。
採用でお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。御社の成長を加速させる機会を。
「感覚運用」のままでは、採用は改善しない
建設業の中小企業では、
採用を「去年と同じ求人を出して様子を見る」だけで終えるケースが多い。
たとえば、応募が10件→採用ゼロでも、
翌年には「時期が悪かったのかな」と片付けてしまう。
しかし、それではデータが蓄積されない。
採用は“回してこそ成果が出る”仕事です。
どんなに求人原稿を変えても、振り返りがなければ成長しない。
厚生労働省のデータ(令和6年版「職業安定業務統計」)によると、
建設業の有効求人倍率は 2.57倍。
つまり、「求人を出すだけ」では競合に埋もれる時代です。
(参考:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/kyujin/)
【体験談】“数字の見える化”で応募が3倍に
ある地方の建設会社で、私は採用フローのPDCAを導入しました。
当初は、年間広告費200万円で応募8件・採用1人。
導入したのは、わずか4つの指標です。
- 応募数(経路別)
- 書類通過率
- 面接通過率
- 内定承諾率
3ヶ月間このデータを記録し続けた結果、
「どこで落ちているのか」が一目でわかるようになりました。
とくに面接通過率が20%しかない。
つまり「応募はあるのに落としすぎている」。
面接質問を見直し、現場責任者に面接トレーニングを行ったところ、
半年後には通過率が42%、応募は24件に増加。
採用数も4名に増え、採用単価は約60万円→18万円に改善しました。
採用PDCAの設計図──“4つの軸”で考える
PDCAとは、
Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)。
しかし、採用現場でこれを実践できている会社はほとんどありません。
理由は、「何を指標にすればいいかわからない」からです。
そこで、私が推奨しているのが採用PDCAの4軸構造です。
① Plan(計画):採用目的とターゲットを定義する
まず、「なぜ採用するのか」を明確にします。
単に“人手が足りない”ではなく、
「施工班を2班体制にして工期短縮を目指す」など、
経営目標に直結させるのがポイント。
その上で、“どんな人”が理想かを言語化します。
これがいわゆるペルソナ設計。
② Do(実行):求人・面接・導線を仕組みで動かす
実行段階では、「採用活動を見える化」します。
求人原稿の改善、面接プロセス、応募導線など、すべてを数字で記録。
例:
- 原稿改善 → 応募率
- 面接改善 → 通過率
- 連絡・フォロー改善 → 内定承諾率
どの施策が効いているかを把握するだけで、
採用の無駄は半減します。
関連記事 →
応募はあるのに採れない会社の原因は“導線設計”にある
③ Check(評価):データで仮説を検証する
採用会議で「応募が少なかったですね」ではなく、
「応募率が前月比−20%、要因は原稿タイトル変更」と言えるかどうか。
これが“感覚運用”から“データ運用”への転換点です。
ポイントは、KPIを1枚にまとめること。
たとえば、
| 指標 | 前月 | 今月 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 応募数 | 15 | 20 | +5 |
| 面接通過率 | 25% | 40% | +15pt |
| 内定率 | 10% | 15% | +5pt |
この表を作るだけで、採用の健康診断が可能になります。
④ Act(改善):成功を仕組みに変える
最後に、“改善点を形式化”します。
たとえば、
- 面接質問の成功パターンをマニュアル化
- 良かった原稿構成をテンプレート化
- PDCA会議を月1回ルール化
これで採用は属人化せず、誰が担当でも回る仕組みになります。
データを見ることは「評価」ではなく「改善」
現場でPDCAが止まる最大の理由。
それは「数字=責められるもの」と思われているからです。
でも、数字は人を責めるためではなく、現場を守るための武器です。
私が人事を担当していたころ、
最初は職長から「数字で管理されるのはイヤだ」と反発されました。
しかし3ヶ月後、同じ職長がこう言いました。
「数字で見ると、自分の現場の弱点がはっきりするな」
データは“責める道具”ではなく、“伸ばす材料”。
ここを社内で共有できると、組織の空気が変わります。
「採用PDCA」を定着させる運用ルール
PDCAを一度やっても続かない会社には、共通の欠点があります。
それは「仕組みが個人任せ」。
続けるためには、次の3つが欠かせません。
- 月次ミーティングの定例化
→ 数字を“見える場”をつくる。 - Excel・スプレッドシートの標準化
→ フォーマットを固定。誰でも更新できる。 - 責任分担の明確化
→ 「誰が何を見るか」を明示。
これを守るだけで、PDCAが自動的に回り始めます。
成果を出す会社の共通点:「データで話す」文化
支援先の中で採用成果を出している会社ほど、
「感覚でなくデータで話す」文化があります。
「この前の面接は良かった気がする」ではなく、
「通過率が+12%上がった」──この“会話の変化”が採用力の差です。
採用職人の実践支援:PDCAを“自走化”させる仕組み
採用職人の採用支援サービス(https://recruit-worker.com/)では、
求人設計から導線改善、PDCA運用までを“一気通貫”で構築。
現場担当者の経験に依存せず、
数字で回せる採用設計を導入できます。
「やりっぱなし採用」から脱却し、
“採れる体質”を自社で育てる仕組みを体験してみませんか?
まとめ:「採用は感覚ではなく構造で動かす」
採用を変えるのは「感覚」ではなく「構造」。
PDCAはその“構造化の技術”です。
求人の見せ方を工夫する前に、
まずは自社の採用データを1枚の表にしてみてください。
そこにこそ、次の一手が隠れています。

