“現場を巻き込む採用”が会社を強くする実践設計法

現場が関わらない採用は、必ず失敗する

──「応募は来るのに、採用できない」。
そんな相談を月に何度も受けます。

建設業の採用は、現場が“動かない限り”成功しません。
しかし多くの会社では、人事と現場がまるで別チーム。
人事は「応募を集める側」、現場は「人を受け入れる側」として分断されています。

私が人事部長を務めていた頃もまさにそうでした。
広告費を200万円かけても応募10名以下。
現場は「どうせまたすぐ辞める」と冷めきっていて、
面接のたびに“形式的なやり取り”だけが残っていました。

その状態から脱却できたのは、“現場巻き込み型の採用体制”を作った瞬間です。

採用職人は建設業に特化した中小企業様向けに採用支援サービスを提供しています。
採用でお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。御社の成長を加速させる機会を。

 

“分断採用”の構造──人事と現場の温度差

人事と現場の温度差には、典型的な3つのパターンがあります。

目的がズレている
人事は「応募数」を追い、現場は「即戦力」を求める。
数字と感覚が噛み合わず、評価軸がバラバラ。

役割が曖昧
人事は「求人を出したら終わり」、現場は「面接の同席を頼まれても、何を見ればいいのか分からない」。
両者の責任範囲が曖昧なまま、採用は“属人化”していきます。

情報が共有されない
「どんな人が応募しているのか」「なぜ辞退されたのか」──
この“フィードバック”が社内で回らないため、改善サイクルが止まる。

結果、採用は「単発イベント」化し、文化として根づかないのです。


【実話】現場が動いた瞬間、応募が5倍に増えた

私がいた会社では、ある時期から“現場代表者”を採用会議に呼ぶようにしました。
最初の数回は「忙しい」と言われて来てくれませんでしたが、
「面接で困ってることある?」と雑談ベースで聞くところから始めました。

1ヶ月後、ある現場主任がこう言ったんです。

「面接の人、現場見せてから決めたいな」

それをきっかけに、面接の一部を“現場見学付き”に変更。
求人原稿にも「現場を見てから判断OK」と書き添えたところ、応募が5倍に。
しかも定着率は、半年で約1.8倍に伸びました。

この成功は偶然ではありません。
“現場の声”が求人と採用プロセスに反映された結果です。


なぜ「現場巻き込み」が採用成功の分岐点になるのか

現場を巻き込む最大の価値は、「リアルな魅力」を伝えられること。

どんなに美しいコピーを書いても、
実際の職人の声や現場の空気を感じられない求人には“説得力”がありません。

たとえば、求人にこう書かれていたらどうでしょう?

「若手が多く活躍中!和気あいあいとした職場です」

それよりも、

「平均年齢32歳。チームで動く現場なので、1人に任せっきりにはしません」

──この一文の方が、求職者の心に残ります。
現場を巻き込むというのは、こうした“言葉のリアリティ”を生むことなんです。


【3ステップ】現場と人事が協働する採用体制の作り方

STEP1:現場を「採用チーム」に加える

人事主導の会議ではなく、月1回の“合同振り返り”を設定。
「どんな人が応募して、なぜ断られたか」を共有します。
ここで大切なのは、“評価”ではなく“共有”。
現場が悪い・人事が悪いという視点をやめ、「何を改善できるか」に焦点を当てます。

STEP2:求人原稿を現場の言葉で書く

人事が整えるよりも、現場の一言が強い。
「暑いけど、やりがいある」「3ヶ月で一人前になるやつもいる」──
こうしたリアルな現場語を原稿に入れるだけで、応募率が跳ね上がります。

STEP3:面接を“評価”から“会話”に変える

現場リーダーが面接に同席し、応募者と会話する時間を設けましょう。
質問リストを統一し、現場・人事の両方が共通の基準で判断できる状態をつくる。
結果、ミスマッチが減り、入社後のフォローもスムーズになります。


現場が採用に関わることで「文化」が生まれる

建設業の現場は、日々忙しく、時間に追われています。
それでも、現場が採用に関わると“空気”が変わる瞬間があります。

新入社員が入ってきたとき、
「お前、よく来たな!最初はきついけど頑張れよ」と声をかける職人が増える。
──この空気こそが、“採用文化”の種です。

文化は仕組みでは作れません。
人と人の“関わり方”の積み重ねが、採用を強くしていくんです。

この考え方は、「“採用しても辞める”建設会社が見落としている、人手不足の本当の理由」にも通じます。


【実績】人事×現場の協働で実現した成果

私のチームが手がけた中堅建設会社では、
以前は「応募20人→採用3人→半年離職2人」でした。

現場巻き込み型体制を導入して半年後:

  • 応募数:95人
  • 採用数:18人
  • 半年定着率:91%

応募単価は3万円以下、採用単価は約40万円。
“広告費をかけずに”この成果を出せたのは、社内体制を変えたからです。

採用は「制度設計」ではなく「信頼設計」

どんなに整った制度があっても、
現場と人事の信頼関係がなければ採用は動きません。

・現場が「人事の考えを理解する」
・人事が「現場のリアルを尊重する」

この両輪を回せる会社は、採用だけでなく“育成”や“定着”も強くなります。


まとめ:“現場を巻き込む採用”が会社を強くする

採用の仕組みを整える前に、まずは現場との関係を整える。
それが、採用成功の最短ルートです。

会社の採用力とは、「現場と人事がどれだけ対話できているか」で決まる。
現場の協力が得られない会社は、どれだけ広告を出しても結果は変わりません。


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参考データ
厚生労働省「令和6年版労働経済白書」によると、
“職場内の協働関係が良好な企業”では離職率が平均27%低下し、採用コストも20%削減できる傾向が示されています。
(出典:https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/)


この記事のまとめ

  • 採用が機能しない最大の要因は「人事と現場の分断」
  • 現場を巻き込むだけで応募・定着の数字が変わる
  • 採用文化とは、“現場と人事の信頼”が生むもの

──採用は「やり方」ではなく「関わり方」で変わる。