採用は「現場の理解」から始まる。人事が現場に入るべき理由

人事が現場を知らないままでは、採用は成功しない
「人事が考える“理想の人材像”と、現場が求める“即戦力像”が違う」。
──このズレが、建設業の採用を止めています。
私が人事部長をしていた頃、まさにこの問題に直面しました。
人事は「応募数を増やしたい」、現場は「すぐ使える人が欲しい」。
お互いが正しいと思っているのに、採用は一向に進まない。
なぜか?
人事が現場の“本当の課題”を知らないまま採用を進めていたからです。
採用は、求人原稿を書く前に「現場を見る」ことから始まる。
それが、私が失敗から学んだ一番の教訓でした。
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“人事だけ採用”が機能しない理由
建設業の現場では、人が足りない・育たない・続かない。
でもその裏には、「現場が採用に関わっていない」という構造的な問題があります。
人事が求人を出し、応募者を集める。
現場は面接の当日に初めてその人と会う。
──これでは、応募者も会社もお互いを理解できません。
さらに深刻なのは、面接後にこうなることです。
「現場がOKを出さない」
「入社後、思ってた人と違う」
「教育の手間がかかりすぎる」
これらはすべて、「採用設計に現場が関わっていない」ことから起きるミスマッチです。
【体験談】“現場に入った人事”が会社を変えた話
私はある中堅建設会社で、人事から「現場研修」を提案しました。
最初は上司から「人事が現場に行って何するの?」と言われましたが、
あえて1週間、現場でヘルメットをかぶって職人と一緒に働いたんです。
そのとき、衝撃を受けました。
想像していた“仕事のきつさ”よりも、
「人が辞める理由」が、圧倒的に“人間関係の擦れ”だったこと。
それ以降、求人原稿の中に「教育担当者の名前」「入社後の流れ」「フォロー体制」を具体的に書きました。
結果、応募が3倍に増え、内定辞退率も激減。
──人事が現場を知るだけで、採用は変わるんです。
現場理解が生む“リアルな求人”とは
現場のリアルを知ると、求人原稿の書き方が変わります。
たとえば、以前の原稿ではこう書いていました。
「明るく元気な方歓迎!未経験からスタートできます」
これを、現場の職長と話し合った結果こう変えました。
「最初の3ヶ月は、工具の名前を覚えるだけでOK。2年で一人前に育てます」
この一文を加えただけで、応募数が約4倍に。
しかも、「自分にもできそう」と感じた未経験者の応募が増えました。
求職者は“リアル”を求めています。
人事が現場の空気を理解していなければ、そのリアリティは伝えられません。
【分析】現場と人事が協働できない会社の3つの特徴
① 「採用は人事の仕事」と決めつけている
現場を巻き込まず、採用が“孤立した業務”になっている。
② 現場が採用目的を理解していない
人事が数字を追い、現場は「人が足りない」の一点だけ。
採用の“意義”が共有されていない。
③ 情報の橋渡しがない
応募者の反応・面接の印象・辞退理由など、
データが人事の中で止まり、現場に届いていない。
この3つを放置すると、どんなに広告費をかけても結果は変わりません。
“体制の再設計”こそが必要です。
【実践ステップ】現場と人事が一体になる採用設計
STEP1:現場同行で“肌感覚”をつかむ
人事担当者が1日でもいいので現場に同行。
実際の作業・チーム構成・教育の流れを観察します。
ここで感じた“温度感”が、求人原稿や面接質問の軸になります。
STEP2:月1回の「現場×人事共有会」
数字だけでなく、感覚を共有する。
「最近どんな応募者が来た?」「どんなタイプが続いてる?」など、
定性的な会話を通じて“共通の採用基準”を作ります。
STEP3:現場主導の面接設計
面接官を現場リーダーとペアにし、現場が質問を担当。
人事はフォロー役に回ることで、応募者との信頼が深まります。
成果事例:応募200人・採用20人を実現
現場巻き込み体制を導入した企業では、半年で次の成果が出ました。
- 応募数:40人 → 200人
- 採用数:2人 → 20人
- 採用単価:150万円 → 40万円以下
- 離職率:半年で35% → 10%
人事が現場を理解し、現場が採用に関わる。
──それだけで、採用は“継続可能な仕組み”になります。
採用文化とは、“理解と対話”の積み重ね
採用文化とは、マニュアルでも制度でもなく、“関わり方の習慣”です。
・現場が人事の努力を理解する
・人事が現場の苦労を理解する
この相互理解の積み重ねが、「採用に強い会社」をつくります。
たとえば、朝礼で人事が一言「新しい仲間が入る予定です」と伝えるだけで、
現場の受け入れ体制は驚くほどスムーズになる。
文化は仕組みではなく“行動の積み重ね”でしか作れません。
まとめ:採用は「現場の理解」から始まる
採用を変えたければ、まず現場に行くこと。
現場を知らずして、求職者の心には届きません。
現場を理解する人事がいれば、現場も“採用を自分ごと”として動き出す。
──その瞬間、会社の採用文化は動き始めます。
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さらに理解を深めたい方はこちらの記事もおすすめ:
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参考データ
厚生労働省「令和6年版労働経済白書」によると、
“現場理解を重視する人事体制を持つ企業”は、定着率が平均26%高く、採用コストが約22%低い傾向があります。
(出典:https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/)
この記事のまとめ
- 採用が機能しない最大の要因は「人事の現場理解不足」
- 現場を知ることで、求人の質と応募者の質が変わる
- 採用文化は、現場と人事の“対話の積み重ね”で育つ
──採用は、書く前に「現場に立つ」ことから始まる。

